スポーツのあなぐら

主に野球のデータ、ドラフトについて書きなぐるブログ。更新頻度は気まぐれ

【再掲】巨人ドラフトにくすぶるサード問題

※ニコニコのブロマガにあげた内容を加筆修正したもの。

 

2012年以降の巨人で問題の多いドラフト指名は何か?

巨人のドラフトの中でどういうわけか*1批判が集中している
2012年以降のドラフトについてこうたずねたら皆さんはどう答えるだろうか。
「一番人気から逃げる」(この意見はドラフト以外の評論家からもやたら多い)、
「一時期育成枠指名が減った」(2007年以降の指名で複数年戦力になった選手はいない)、
「昨年の社会人捕手連続指名」(4学年差があり高校生と大学生を獲るのと変わらない)、
など多種多様な回答があると思うが、
私なら「2014年1位の岡本和真」と答える。
最も期待されているであろう若手スラッガー候補に何を言ってるのかと思われるだろう。
たしかにこの当時の構成を考えると将来のスラッガーを欲しがってもおかしくはないし、
村田が持っている間にサードを何とか育成したかったのもわからないではない。
しかし巨人は2011年から高橋洸、坂口真規、和田恋と
3年連続でサードを指名している。
そこにファーストからコンバートした岡本が加わった。
手薄な外野へのコンバートもなかった(できなかった?)ため、
空いたポジションに回しての抜擢もしづらい
一・三塁コレクションが岡本指名によって作り出されてしまったのだ。
4人中3人が高卒なので若さだけはあるが、
実態は以前巨人がやって批判された「(四番)一塁手集め」とほぼ同じだった
(この意味もあって私は昨年の岡本の外野起用を高く評価していた)。
また、ドラフトや若手マニアが主張する「若手同士の競争」が
一歩間違うとどうなるかを示すいい見本でもある。
彼らは往々にして、たとえば同じ内野手ならショートとファーストを
区別しないので、こうなる危険性は非常に高い
(『アマチュア野球』のドラフト候補リストなどがわかりやすい例)。
逆に外野は指名数が異常に少ない上に獲るのは長野久義、重信慎之介とライトばかり。
センターは長年、高卒の大田、橋本、立岡に期待をかけていたと思われるが、
この育成がうまくいかなかったことが昨年の陽岱鋼獲得にもつながっている。
そういう意味ではセンター指名も内野からのセンターコンバートも少なすぎるのも
問題点と言えばかなりの問題点ではある。

巨人にくすぶるセカンド問題

このアンバランスなドラフトは、
長年にわたって生え抜きサードがいないのが最大の要因なのは間違いなさそうだ。
しかしこれを見る前にまずはセカンド問題を見る必要がある。

巨人のセカンド問題は仁志敏久移籍から起こったと思われているが、
さらに元をたどると篠塚和典の衰えが見え始めた1990年ごろまでさかのぼる。
後継候補一番手だった緒方耕一は故障続きで出場機会を増やせず
(出られたときは好成績を残している)、
その後使われることの多くなった元木大介も結果は出せなかった。
この状況を解決したのが97年から起用された仁志敏久だったが、
仁志がいなくなった後は脇谷亮太藤村大介などの生え抜きも
木村拓也古城茂幸などの移籍組のベテランも結果を残せない状況が続いた。
その後は片岡治大やクルーズなどを獲得し、
さらに打力重視でマギーをセカンドに回すなどのやりくりで何とかしている。
仁志の時代以外はむしろ我慢に我慢を重ねた併用が目立つポジションでもあった。

巨人の生え抜きサード問題

巨人のサード問題はセカンドの少し後、
岡崎郁高齢化と原辰徳の三塁再コンバートが行われた1993年に顕在化した。
このベテラン2人の衰えがほぼ同時にやってきた上に
ハウエルなどの外国人獲得や長嶋一茂吉岡雄二らの中堅・若手起用もうまくいかない。
97年以降は元木大介、後藤孝次が中心になったが固定までは至らなかった。
そして2000年に江藤智をFAで獲得した後は
小久保裕紀小笠原道大村田修一、マギーと外様・外国人選手で固められている。
彼ら外様組の打撃・守備の衰えが目立ってきた2003、2010~11、2015年も
代わりに起用された選手は結果を残すことができなかった。
こうした中で生え抜きのサードが1年だけ定着したのは1996年、
前年に逆指名で入団したサードの仁志が新人王を獲得する活躍を見せた年だった。
しかし仁志は翌年さらに懸案だったセカンドにコンバート。
セカンドよりはサードのほうが外国人やFA選手で補いやすいとの
もくろみもあったのだろうか。

サードの人材難はサード育成で解決するのか

こうしたサードの人材難に対して、巨人は2000年代に入ってから
外様組ががんばっている間に新たに選手を育成しようとする向きが強くなってきた。
2000年代前半はまだ他ポジションとの併用も目立つが、
中盤以降は中井や大田をサードとショートで併用しての育成、
2010年以降は先ほどあげた面々である。
他にも生え抜きではないが、FA導入直前の93年にヤクルトから長嶋、
2003年に近鉄から吉川元浩中濱裕之(中濱は外野手)をトレードするなど
FA選手に頼りきらないサードスラッガーの育成には意外と力を入れ続けているのも
このチームの隠れた特徴である(最近なら石川慎吾のトレードもこれに近い)。

しかし前に書いたように、
現代のプロ野球には「サード出身の日本人サード」も、
「プロ入り当初からサードで育成された日本人サード」も極めて少ない。
一方、サードにも回しやすいショートやキャッチャーの指名は、
ショートが2009~11、キャッチャーは2010~12年の間本指名がなかった。
しかも少数精鋭指名だった各選手たちも打撃が伸びないため、
よけいに村田やマギーらを獲得せざるを得ないという悪循環に見舞われていた。

ちなみに巨人がドラフトで獲得したサードの育成に成功したのは仁志が最後である。
そしてその前は松井秀喜
2人とも、最終的により希少性の高いポジションへコンバートされた選手だった。
現代のドラフト候補に多い打撃型サードの育成の難しさが
こんなところからも見えている。
そんな中で今年は岡本を再びサードに戻すとのこと。
岡本はマギーとの争いというよりは
むしろ阿部慎之助の打撃との争いになるかもしれないが、
打撃のプラスが守備のマイナスを(リーグ全体で)大きく上回るぐらいまで成長しないと、
将来もサードで固定し続けるのは難しくなるだろう。
この守備の負担が打撃の成長にどの程度影響を与えるかが重要なのは言うまでもない。
本人にも首脳陣にも相反する大きな声が多数浴びせられると思うが、
どのような成長、起用が見られるだろうか。

*1:「なぜ批判されるか」という意味ではなく、成功者数が同じ程度で逆指名も多用した2011年以前が「なぜ同じように批判されないか」という意味