1位から野手を並べる指名
1996年ダイエーや2015年楽天などを見るとわかるが、
上位指名から野手を3人以上並べるドラフト指名は
異常なほどほめそやされる。
もっとも大成功を収めた場合でも、
ドラフト下手とされるチームが1位で大学生・社会人を指名した場合(96年阪神など)、
1位指名で高校生の目玉選手を回避した場合(2001年西武など)などは
むしろ批判されることも珍しくないのだが。
では、1位から3人以上野手が連続で指名されたケースを見てみよう。
今回調べたのは1983年までなのでそこはご容赦いただきたい。
1位からの野手を並べるのは最大で5人までとなっている。
実のところこうした指名は80年代はそこまで珍しくなく、
90年代はしばらくなかったが、
やたら強調された96年ダイエーの前年から立て続けに4チームが敢行。
2000年代からは再び数年に1回というペースになっている。
2010オリックスや2012広島のように投手を外した後野手に向かうケースもある。
なお2001年と2003年は正確には4巡までに3人の指名となっている。
細川は自由枠で、中村が2巡、比嘉が3巡指名。
結果はというと、
尾形が大怪我で定着できなかった2003年広島を除けば、
最低でも1人は当たり選手を輩出している。
2015年楽天も既に茂木が定着し、オコエも控えている状況だ。
反面、投手は指名数が少ないのもあってか当たり選手がほとんど出ていない。
96年ダイエーでなかったことにされている部分
1996年のダイエーには、他のチームと比べて異なる点が2つある。
まず高校生がいない。
他のチームには最初の方の野手だけでも必ず高校生がいるのだが、
このダイエーは指名した7人全員が大学生・社会人である。
そしてもう一つ。
投手を3人以上指名したのがこのダイエーだけということだ。
1990年までは本指名が最大6人までだったため
この条件を満たしつつ投手を3人獲るのは非常に難しい点を考慮する必要があるが、
それ以降でも投手2人指名すらあまり多くない中で、
この年のダイエーは3人も投手を、4~6位まで連続で指名している。
しかも先ほど言った通りこれらは全て大学生・社会人で高校生はいない。
ダイエー時代の根本陸夫は、
即戦力を軽視したことも、投手指名をおろそかにしたこともなかったのだ。
この点が全く取り上げられないのは、
評論家が上位指名しか見ないためにそもそも知られていないのか。
それとも野手と高校生を指名させるために何か都合が悪いことでもあるのだろうか?
2位以下で野手連続指名のケース
しかし考えてみると、
現在のルールで1位で野手がとれるかどうかは特に運の要素が強い。
なら2位から野手を指名し続けるケースはどうなのだろうか。
上位指名しか見ない人たちからすれば
「バランス型」か「投手偏重」にあたるのかもしれないが、
実際の指名数では立派な野手重視になるはずである。
この表では5位までしか表記しなかったが、
実際の指名ではうち2チームがもっと後まで野手指名を続けている。
こちらは1位で成功している投手も多く、
肝心の野手も、89年以降は全員外れという年はないようだ。
そんな中、歴代の中でもとんでもない野手偏重になっていたのが昨年の巨人。
1位で清宮・村上と外したこと、
前年が投手6:野手1*1という投手偏重になったことが影響しているのだろうが、
2~8位までを全て野手で固める指名になった。
しかし残念ながら、他のこうした野手偏重とは違って酷評されることになった。
ファンや評論家の希望通りに
一番人気の高校生を入札し続けてくじを外し続けた結果なのだが、
いったい何が不満なのだろう。
やはり高校生が少なく、大学・社会人偏重だからだろうか。
そうなると96年ダイエーが矛盾するが、
おそらくそんなことは誰も知らないのだろう。 少なくとも、こうしたファンや評論家の声をうのみにして
野手偏重指名を求める必要は全くない。
*1:2017年とは真逆で、1位で一番人気投手を2連続で外した後に野手、2位以下が全て投手だった