スポーツのあなぐら

主に野球のデータ、ドラフトについて書きなぐるブログ。更新頻度は気まぐれ

大学野球の日米バランス比較

 

4月になって、
日本でも各地で大学野球の春季リーグ戦が開幕し始めている。
一方アメリカでは、
公式戦の形態が大きく異なる*1
2月から5月にかけて試合が行われており、
日本と同じく6月には全国大会も開催される*2
今回はそんな大学野球の日米の違いを簡単に見てみよう。

日米のリーグ戦の違い

最初に書いたように、
これを書いている私もいまいち形態を把握できていない。
しかしざっと見る限りでは、日本の大学野球とは次のような違いがあるようだ。

  • 一部の大学以外はNCAAに加入しており、公式戦はNCAAの管理下にある
  • 各大学はそのレベルに応じてディヴィジョンごとに分けられ、さらにカンファレンスに分けられている
  • ディヴィジョンの入替戦はない。カンファレンスの再編などは時々起こる
  • カンファレンス内でのリーグ戦も行われるが、それ以外のカンファレンスの枠を超えた試合も公式戦としてカウントされる。同カンファレンス内のリーグ戦は概ね4~5月

ここに書いたことも全て正しいかどうかはわからないのだが、
要は日本のような各リーグごとの運用ではなさそうということだろうか。
日本の大学生とは違って
4年間必ず同じ大学に在籍するわけでもなく、
翌年にはMLBと契約する選手や別な大学へ移る選手、
開幕前にベンチから外れての移籍もあるようだ。
こうした選手には日本からの野球留学選手も少なからず存在している。
試合数は非常に多く*3
当然平日でも試合は行われているのだが、
一応勉学優先*4ということなのか、
平日の場合は午前中に講義を受けてのナイトゲームが多い*5

投高打低の日本、打高投低のアメリカ

なぜ自分でもよくわかっていないことを長々と書いたのかというと、
公式戦の形態の違いがこの後の内容に深く関係している可能性があるからだ。

まずはリーグ平均打撃成績を見てみよう。
日本は過去5年間の東京六大学・東都一部・関西学生を、
アメリカのほうはある程度打撃成績が判明した2017年の25カンファレンスを
出してみる。

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日本は極端な投高打低、
対してアメリカは極端な打高投低になっている。
特に目立つのは打率と長打の差だろうか。

続いて投手成績も見てみよう。

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こちらは与死球が載っていたアメリカのカンファレンスが多くなかったため、
打撃成績よりも少ない15カンファレンスになっている。
ある意味、平均得点よりも平均防御率のほうが、
それぞれの投高打低・打高投低がわかりやすかったかもしれない。
リーグ平均2点台が珍しくない日本と、
5点台が珍しくないアメリカとはまた極端な違いである。
そんな中でちょっと気になるのがK/BBやK-BB。
奪三振率・四死球率がどちらも日本に比べてアメリカのほうが高めになっているためか、
結果としてK/BBやK-BBには大した差がない。
失点の違いはHRを含めた長打やBABIPの差によるものと言えそうだ。

なお東京六大学は、日本の大学野球の中ではかなり打高投低なほうだ。
特に2017年は歴代の中でも打高投低な年にあたる。
こう書くと何かと東京大学を引き合いに出す人は多いが、
東京大の存在を考慮したとしても*6それだけで説明はつかないし、
京都大がある関西との違いの理由にもならない。

他のリーグはこの3リーグとあまり変わらない。
今年好投手が多く投手戦が目立つ首都大学リーグは
関西と同じで平均2点台が当たり前、シーズンによっては1点台になることもある。
実力が拮抗して入替戦もあるリーグでは
各チームの防御率が1点台から悪くても4点台前半で、
首都のように平均2点台になることが多い。
入替戦のないリーグでは上位チームと下位チームで極端な差が出る*7が、
平均すると高くても東京六大学程度に落ち着く。

大学以外のアマチュア野球・独立リーグ

高校野球は以前打撃成績を出したが、
今年のセンバツは平均防御率4.06。
夏だと4点台になることはたまにあり、去年は4.58を記録したが、
センバツでの4点台は極めて珍しい。
金属バットを使うためか大抵の年でも2点台になることは多くないが、
それでも3点台というのはかなりの投高打低ともとれる。

社会人も都市対抗はかなりの投高打低である。

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手許のデータがあまりに乏しくて申し訳ないが、
トーナメント戦とはいえこちらも平均防御率2点台、
それも2点台前半が当たり前となっている。
他のJABA大会や都市対抗予選を見ても、
大量得点が入る試合というのはあまり多くない印象はある。
かつて金属バットを使用していた時代は
かなりの打撃戦になることが多かったが、
木製になってからは逆に極端な投手戦の時代になっている。

独立リーグも投高打低な年が多い。

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アイランドリーグは防御率3点前後。
一方のBCリーグは充分平均的か打高投低に見えるかもしれないが、
ここには出していない個人スタッツを見ると、
HRの大半は外国人選手が打ったものになっている。
これが日本人選手に限定されるといささか恐ろしいことになりそうなのだ。

現在の日本では、全硬式野球の中で
NPBが最も打高投低と言えるかもしれない。
と言ってもNPBがおかしいのではなく*8
マチュア独立リーグに比べて長打力のある選手が
日本人・外国人選手ともに集まってきているからと言える。

日程と形式が生み出す日米の違い

こうした日米の投打のバランスの違いがなぜ起こるのか、
理由はいくつも考えられる。
小さいころから長打を打つバッティングを許すアメリカと、
ゴロを打たせる日本という違いを指摘する人もいるかもしれない。
もちろんそうした側面や体格の違いなどもあるだろうが、
一方で試合日程や大会形式の違いも指摘できる。
シングルイリミネーションのトーナメントになる高校、
決まった曜日に週2~3試合が行われ2戦先勝勝ち点方式の大学、
オール・トーナメントか4チームリーグ戦からの決勝トーナメント方式の社会人、
どれをとってもエース投手に無理をさせれば結果がついてくるようになっているのだ。
高校は各地方大会の中盤までは日程が空く地域が多く、
社会人は1週間弱の大会が終われば数週間公式戦がない。
リトルリーグやシニアリーグなどがどのような形態をとっているかはよく知らないが、
このような日程と1勝というより1敗の重みが極端に大きい形態とが組み合わさることで
極端な投高打低の流れが作り出されているのではないだろうか。
週4~5試合はこなすアメリカではこんなことをしたら1シーズンすら戦えないし、
かつてのNPBにしても、あの稲尾でようやく全試合の半分ぐらいなのだ。
だからアメリカは打撃を重視する一方で力は多少劣っても投手の数そのものを増やし、
日本は最も良い選手を投手にしてその選手の投球に賭ける。
そして、こうした常に相手のエースと戦う試合の流れが、
さらに長打を量産しづらい野手を作り出している部分もあるだろう。
試合日程がもう少し過密になる独立リーグでも投高打低が続くのは
そうした要素の中で育ってきた選手たちが集まった結果かもしれない*9

*1:これを書いている私もいまいち形態を把握できていない。この点はご容赦いただきたい

*2:単純に年度末・卒業前の大会ということでもある

*3:前回紹介した2016年のコースタル・カロライナ大学はカレッジワールドシリーズを含めて約4ヶ月半で70試合以上を行った。5月のリーグ戦終了まででも50試合を超える

*4:実態としてはむしろセミプロや独立リーグに近いような気がするが。日本の甲子園以上の人気を誇るフットボールではこうした点がかなり問題視されているという

*5:同じ「勉学優先」でも、平日午前から試合が行われる日本の高校・大学とは大きな違いと言える。
というか平日のナイトゲームは「翌日の授業に差支える」と批判されたのに、「その日の授業をつぶして行われる」平日のデーゲームが一切批判されない理由がわからない

*6:東大から大量得点がとれるとしても逆に失点も少ないのだから、リーグ平均にはそこまで極端な影響にはならない

*7:たとえば仙台六大学はちょうど上位3チームと下位3チームではっきりと分かれている。仙台大が台頭するまでは2強あるいは1強状態だったが

*8:日本では投高打低信仰が強いのか、以前より少しでも打撃優位になると「レベルが下がった」と評されることが多いのであえてこう書いた。
2011~12年の超投高打低なNPBを「これが真の野球」と称賛していた人間をどれほど見たことか

*9:この点は大学・社会人でも当てはまる