スポーツのあなぐら

主に野球のデータ、ドラフトについて書いていくブログ。更新頻度は気まぐれ

成功しているのに注目されないドラフト・育成戦略

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に「成功していないのに『成功』とされるドラフト戦略」を取り上げてみたが、
今度はその逆で、「実際には成功しているのに成功とはみなされない、
あるいはほとんど注目されないドラフトや育成の戦略」
について見てみよう。
似たようなケースには、大成功を収めている場合だけではなく、
「失敗とまではいかないのに大失敗と叩かれている」パターンもある。
たとえば前回挙げた「失敗例」の中ではロッテが該当する。
ロッテの場合は2年連続Aクラスの原動力の一つになっており、
「5年先の将来」につなげた指名としては大失敗とまではいかないはずなのだ。

西武の3位野手指名

先日も書いたように、
西武は投手の上位指名がうまくいってない代わりに
3位で野手を指名する戦略が当たりに当たっている。
この10年間で3位に野手を指名したのは6回あるが、
主力になっている選手が多い。
また、指名選手の出自がバラバラで、
高校生2、大学生3、社会人1と万遍なく指名してる。
上位指名の野手は半数以上が高校生になるため、
大学生や社会人でも逸材が残りやすいという側面はあるかもしれない。
しかしこうした戦略も、
最近は富士大の存在がクローズアップされることもでてきたので
全く取り上げられないというわけではないようだが、
それほど見ることはない。
それどころか人によっては、
唯一1・2位ともに野手指名して現在大成功となりつつある
2013年(森友哉山川穂高)だけが理想に掲げられたりと、
どうやらこの戦略を生かそうと考える評論家やファンはほとんどいないようである。
逆にプロ球団はというと、
そもそも3位までに野手を1人も獲らないケースがあまりない*1ので、
「3位に野手」は参考にする云々という話にはならない。
評論家やファンからすれば「他の(うちの)チームもやってるから」と
いうことなのかもしれないが、
それがなぜか「西武を見習って上位で野手をたくさん指名」となる理由、
コレガワカラナイ。

広島の主力野手の出自

今年も首位を快走しているカープの場合、
育成を標榜するチームだけあって、
何かにつけてほめそやされている。
それなのに、なぜか全く無視されている部分もまた少なくない。
1990年代にはあまりうまくいかなかったが、
最近再び力を入れるようになった外国人選手の育成もその一つだろう*2

そんな外国人選手の育成がじょじょに当たり始めているカープ野手陣。
高校生ばかり指名して主力に並んでいるかのような見方をされることも多いが、
実際にはかなり多岐にわたっている。
まず高卒選手で固定されていたのはセンターの丸佳浩
ライトの鈴木誠也、今年は不調だがサード安部友裕がいて、
併用だとキャッチャーの会澤翼もここに入る。
一方でこのチームは大卒と社会人出身の野手にも
田中広輔、菊池涼介松山竜平など、
比較的最近の指名選手からも主力は多い。
特に二遊間がどちらも大卒と社会人になっている
だが大卒選手の場合は、菊池涼介だけしか注目されず、
しかも菊池の指名を褒めることよりも
東京六大学や東都叩き*3か、
準地元の中日叩き*4のために用いられている。
社会人出身の田中広輔獲得も指名が噂されていた巨人批判に使われるぐらいだ。
活躍している選手自体は当然持ちあげられているのだが、
実際に指名した編成やスカウトの眼力が褒められるのは、
苑田部長か松田オーナー個人が取り上げられる時ぐらいである*5
「高校生・大学生・社会人のバランスが大事」と言う人に
「だからとにかく高校生を指名しよう」と言う人はいても、
「だから大学生・社会人も指名しよう」と言う人は存在しないのだ。

広島の高校生投手

もう一つカープについて取り上げよう。
高卒投手についてだ。
このチームの高卒投手は先発が少なく、リリーフが非常に多い
それも、中﨑翔太のような下位指名の選手だけではなく、
上位指名の今村猛中田廉もリリーフで活躍しており、
今年は2年目のアドゥワ誠も台頭している。
逆に先発はほとんどが大卒、それもドラフト1位で指名した即戦力が大半だ。
ただし、この流れは言い換えると、
先発では高卒があまり育っていないとも言えてしまう部分ではある。
最近の選手で少し台頭したのは今年はいまいちな中村祐太だけで、
少し前の齊藤悠葵今井啓介などは結局うまくいかなかった。
また大卒投手でも素材偏重と言えた中村恭平などはいまいちで、
昨年台頭した薮田和樹も今年は制球難に陥っている。

これはカープに限らず球界全体の特徴なのだが、
あまり制球の良くない選手ほど先発として育成しようとする傾向が見られる。
この点でカープの場合は、
リリーフなら使えると判断した投手への転向の決断が早い
と言えるのかもしれない。
ただ「高校生=先発、大卒・社会人=リリーフ」で一括りにしようとする傾向が
極端に強い日本球界において、
カープのこの投手構成は非常に画期的なはずだ。
ところがドラフトの世界では、
彼らが主力になっていることは盛んに取り上げられても、
彼らがリリーフであることは誰も伝えない。
それどころか他のチームだと、
「安易にリリーフにして大器の成長を阻んだ」と批判を浴びることが
圧倒的に多い。
「高卒=エース(+クローザー)、大学・社会人=中継ぎ(+ローテの穴埋め)」は
評論家がとにかく高校生を獲らせる根拠の一つとなっているため、
今のカープは都合が悪いから無視しているのか。
そう邪推してしまう現状になっている。
「今のカープだから叩かれずに済んでいる」と言ったほうがいいのかもしれない。

*1:各チーム10年に1回ぐらいでしかない。野手偏重よりは多いが、その程度なのだ

*2:ドラフト評論家には、チームの編成はドラフトが全てで、外国人、トレード、FAなどをあくまでおまけのように考える人が多いように見える。大御所は特にその傾向が強い

*3:ただし同じ東海地区・岐阜出身の野間峻祥や九州六大学出身の松山らは無視される

*4:ただし中日が大学生や社会人に注目すると、地元や準地元の選手でも激怒する

*5:苑田部長や大瀬良大地を引き当てた時の田村スカウトなど、熱意や誠意といった部分はそれなりに取り上げられているのだが