今回見たいのは
高校生・大学生・社会人(独立リーグ含)の単純な指名数の違い。
前置きはなしでさっそく見てみよう。
〇〇のテクニック
本指名の合計数はこうなっている。
高校生 | 大学生 | 社会人 | 合計 | |
---|---|---|---|---|
セリーグ | 131 | 129 | 111 | 371 |
パリーグ | 153 | 110 | 121 | 384 |
「まずパリーグは単純に指名数が多い。
そしてパリーグは高校生指名が多く、セリーグは大学生が多い。
社会人もパリーグが多いが、
たぶん指名がうまくないオリックスやロッテあたりが偏っているのだろう。
指名数が多く、特に高校生が多いからパリーグは強いし、セリーグは弱いのだ」
というのが騙しのテクニックである。
これらのデータは、ほんの少し細かくするだけで全く違った意味を持ってくる。
パリーグに多いもの、セリーグに多いもの
ここから今度は投手と野手に分けてみよう。
高投 | 高野 | 大投 | 大野 | 社投 | 社野 | 合計 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
セリーグ | 74 | 57 | 70 | 59 | 69 | 42 | 371 |
パリーグ | 66 | 87 | 66 | 44 | 92 | 29 | 384 |
大学生投手はあまり変わらないと言っていいだろう。
そして本指名のパリーグは高校生野手と社会人投手、
セリーグは高校生投手と大学生・社会人の野手の指名が多い。
また少し言い方を変えると、
パリーグは野手は指名した野手の半数以上が高校生と高卒選手の指名が多いが、
投手のほうは即戦力中心の指名をしていることになる。
なお指名数を単純に足すと、
投手野手合計野手率セリーグ21315837142.6%パリーグ22416038441.7%
となり、野手の指名率はセリーグのほうが若干高くなっている。
単純な野手指名数ではパリーグのほうがほんの少し多いが、
たった2人では同じと言って差し支えないだろう。
「野手の指名が多いほうが強くなる」という俗説とも違った結果になっている。
育成選手の指名数
育成を含めた場合はまた少し状況が変わってくる。
高投 | 高野 | 大投 | 大野 | 社投 | 社野 | 合計 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
セリーグ | 100 | 76 | 89 | 80 | 95 | 56 | 496 |
パリーグ | 87 | 118 | 78 | 57 | 101 | 52 | 493 |
育成指名はセリーグに投手が多く、
社会人もかなり増えている、
ということは独立リーグ・クラブチームの指名が多い。
一方のパリーグは高校生、独立、クラブチームからの野手指名が目立つ。
育成選手の位置づけがチームによって違うからだろうか。
このあたりは、チーム別で見る際にもう少し詳しく見てみたい。
信仰は自分の目を裏切る
交流戦や日本シリーズでパリーグが強い理由は、
これまでドラフトに絡めた議論もかなり行われてきたと思う。
そんなパリーグがセリーグよりも目立って指名が多いのは、
高校生野手と社会人投手になっている。
ところが、高校生のほうはことあるごとにパリーグが強い理由に挙げられるが、
社会人投手のほうは一切取り上げられないどころか、
高校生投手もパリーグの指名が多いかのような主張をされることも多い。
一般のファンや一部のドラフト評論家にとっては、
高卒選手以外にほとんど関心を持てないから気づかないのかもしれないが、
現実の数字はこのようになっている。
今回の話は、
パリーグが強い(あるいはセリーグが弱い)のは社会人投手が多く、
高校生投手が少ないからだ、
という話ではない。
ただ、プロですぐ使えるだけの実力をまだ持ってない選手や、
すぐに使うには育成に時間がかかる、故障が多い、
というタイプの選手の指名が多い可能性はある。
またここ最近は高校生の最高球速が飛躍的に上昇しているうえに、
1、2年目に期待を持たせる高卒投手が数人出てくることがあるため、
高卒投手の評価がまた極端にインフレを起こしつつある。
一方で、1、2年目に期待を持たせる高卒投手というのは
過去にも毎年のように出てきては大半がその後1、2年で失速しており、
実際にすぐ大成するのはその中のごく一部になっている。
この点、特に高卒投手を高く評価したがる人たちは
少し自分の評価を再検討してみる必要はあるだろう。
「甲子園で活躍している投手を高卒時点で大量指名すれば
2、3年後には今後数年間安泰の投手王国がつくれるはずだ」
という幻想は捨てよう。
ただそれだけの話である。