スポーツのあなぐら

主に野球のデータ、ドラフトについて書いていくブログ。更新頻度は気まぐれ

阪神に捕手の上位指名は必要か

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今回は阪神に限った話ではないんだが、
元ネタが阪神の話だったのでこんなタイトルになった。

 

先日のNumberで、阪神の捕手が育たない理由の1つに
上位指名が少ないことが挙げられていた。
絶対的な正捕手の存在に重きを置かれる
日本ならではの発想のようにも見える。
もっとも、育成指名の甲斐拓也を引き合いに出しながら
上位指名していないから育たないと書かれていたり、
捕手を上位指名していないと言いながら
坂本誠志郎を推しているあたり何かがおかしいんだが。

1993年以降の捕手上位指名

では、当の藪恵壹氏が指名された1993年以降の数字を見てみよう。
2001~04年は自由枠+3巡まで、05~07年は各2巡までだ。

  93~04 05~07 08~18
広島 2 0 1 3
ヤクルト 0 0 1 1
巨人 3 0 3 6
横浜 2 0 1 3
中日 2 1 0 3
阪神 4 0 1 5
西武 2 1 1 4
ソフトバンク 1 1 2 4
日本ハム 2 0 2 4
オリックス 1 0 1 2
ロッテ 2 0 1 3
楽天   0 2 2
近鉄 2     2
23 3 16 42


なるほど、2008年以降では阪神の上位指名が少ない。
2015年2位の坂本だけだ。
唯一指名がない中日も去年中村奨成を1位入札している。
これだけを見ると阪神は上位で捕手を獲る気がないように思える。

ただしその前はどうか。
阪神北川博敏中谷仁浅井良岡崎太一の4人が上位指名。
指名はかなり多かった。
当時を考えると、関川浩一山田勝彦がいささか物足りない、
矢野輝弘をトレードした後は前にもまして次世代が欲しい。
それで上位指名が増えたのだろう。

最上位指名の人数は

じゃあそのうち1位指名はどうか。
1位指名と自由枠、高校1巡、希望枠をピックアップしてみた。
逆指名の2位は入ってない。

順位 チーム 氏名 出自 備考 指名順
2003 1 広島 白濱裕太 高校    
2017 1 広島 中村奨成 高校    
2017 1 ヤクルト 村上宗隆 高校 コンバート  
1995 1 巨人 原俊介 高校 外れ1位 19
2000 1 巨人 阿部慎之助 大学    
2013 1 巨人 小林誠司 社会人    
2001 1 中日 前田章宏 高校 外れ1位 12
2006 大社希 中日 田中大輔 大学    
1997 1 阪神 中谷仁 高校    
2001 阪神 浅井良 大学    
2004 阪神 岡崎太一 社会人    
1995 1 西武 高木大成 大学    
2001 西武 細川亨 大学    
2005 高校1 西武 炭谷銀仁朗 高校    
2013 1 西武 森友哉 高校    
1994 1 ダイエー 城島健司 高校    
2005 高校1 ソフトバンク 荒川雄太 高校    
2010 1 ソフトバンク 山下斐紹 高校 外れ1位 5
1998 1 日本ハム 實松一成 高校 外れ1位 22
2008 1 日本ハム 大野奨太 大学    
1996 1 ロッテ 清水将海 大学    


「指名順」は、競合を外した後の指名された順番。
逆指名の時代は1・2位同時入札なので
外れ1位でも20番目近くになることがある。

指名が多いのは西武。
しかも、2年目から一塁にコンバートされた高木大成を含めると
全員が戦力になっているのはすごい。
阪神は3人とやはり人数は多い。
逆に1位指名がなかったのは横浜、オリックス楽天近鉄
村上宗隆を1年目からコンバートしたヤクルトも
事実上0人と言っていいだろう。
1位指名がないチームは意外と多いようだ。

ところで、Numberで強調されていた高校生は12人。
成功と言えるのは城島健司炭谷銀仁朗森友哉の3人か。
分母から村上を除いても成功率は27.3%、
もし中村奨成が成功したとしても36.4%。
うーん…?

当たり前だけど当たり前ではない結論

「正捕手を育成するために上位指名は必要か」に対する答えは、
データを出すまでもなくわかっている。
「いるに越したことはないが無理に獲る必要もない」だ。
たしかに過去の阪神だと
田淵幸一木戸克彦が1位で関川が2位、
移籍してきた矢野も中日2位指名だから、
やはり上位で獲らないといかんという気分になるんだろう。
ただ、今見た1位指名の他の選手を見ると
大卒・社会人出身で一軍に長くいたのは
阿部慎之助大野奨太小林誠司清水将海ぐらい。
2位では田上秀則、北川、里崎智也藤井彰人らの名前が見られる*1が、
そこまで期待値が高いようには見えない。
特に捕手でのバッティングは、
城島、森、阿部、里崎までと
それ以外との落差がずいぶん激しい。
それでも中位以下よりは確率が高いとは思うんだが、
何が何でも上位で獲れ、となるとかなり疑問だ。

こうしてみると、
ドラフトの順位が捕手の大成にそこまで関係してはいないのがわかる。
もっとも、特に捕手に対しては
選手の成長に何を重要視するかが
人や球団の方針によってあまりにバラバラすぎて、
「育った」の意味がそもそも食い違ってしまう。
その点がまた、この話の難しいところだと思う。
なにせ打撃だけに目を向けた場合、
スタッツがリーグ平均に達した捕手は
森、會澤翼と梅野隆太郎しかいないのだから*2

*1:他には三輪隆柳沢裕一木村一喜吉田裕太高城俊人、清水優心など

*2:甲斐はOPS.602で、年下の田村龍弘(.636)や清水(.643)より下になる