スポーツのあなぐら

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3年で戦力外の佐藤世那は異例だったのか

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昨年オリックスを戦力外になり、
今年から横浜球友クラブでプレーすることになった佐藤世那投手が、
先日から話題になっているらしい。
そんな中で時々目にするのが、
佐藤を3年で戦力外にしたオリックスへの批判だ。
オリックスは編成も育成も下手だから3年で切った」と、
あたかも他のチームならこんなに早くは切らないかのように
言われている。

3年以内に戦力外となった高校生

なら、実際に3年以内に戦力外になった高卒選手はどれだけいるか。
3年以内で戦力外になり、
なおかつ同じチームの育成選手にならなかった選手をリストアップしてみよう。

投手

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本指名、育成指名ともに該当者がいないのは
阪神、西武、楽天の3チーム。
支配下からの戦力外が最も多いのは中日、横浜の順で、
どちらも特定の時期に集中している。
昨日のツイートでは野手に転向した金本を入れ忘れていた。

野手

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野手は育成選手を含めると思ったより多い。
これで投打とも該当者なしは西武だけ、
指名選手の該当者がいないのは西武以外に阪神となっている。
合計では投手が本指名19人、育成13人。
野手は本指名9人、育成16人。

佐藤の例から見える別な問題点

2005~15年にドラフトの本指名でプロ入りした高卒投手は170人。
このうち3年以内の戦力外選手は19人で11.2%だから、
そういう意味でとれば「珍しい」部類に入るかもしれない。
だが、3年以内に戦力外になる高卒選手は
各チームに分散していて、オリックスだけが多いわけではない。
オリックスも11年で13人の高卒投手を指名しているから、
こうした投手が1~2人出るのは確率的にもおかしな点はない。
なのになぜこれが「オリックスが育成下手だからだ」とされているのか。

最近そういった投手が少ないから珍しかった、というのも一因だろう。
これならまだ納得できる理由だ。
しかしどう見ても、それよりも大きな理由が2つ考えられる。
1つは、「甲子園の有名選手」であること。
甲子園を決勝までほぼ1人で投げ抜いたエース、
もっと言えば自分がドラフト前から知っている選手となると、
思い入れが出てきてどこまでも長い時間をかけるべきだと考えるのだろう。

そしてもう1つ。
オリックスは育成下手」という先入観だ。
だからこそ、オリックスは叩かれているのに、
3年目の高卒野手を2年連続戦力外にしている広島には何も言わない。
何もこれはオリックスだけではない。
たとえば2015年以降の巨人は
独立出身の育成選手を1~3年で戦力外にした時こっぴどく叩かれたが、
2011年以前の「育成の巨人」が同じように叩かれることはまずありえないし、
同じ時期に高卒の金子を2年、
独立出身の中村恵吾を1年、クラブチーム出身の河野大樹を2年で切った
ソフトバンクは何一つ批判されなかった。
「『育成上手』が解雇するなら仕方ない」と思われたか、
「『育成上手』は早くに戦力外にしても周りがその事実を忘れる」
かのどちらかだろう。
端から見ているとはなはだ矛盾した事態なのだが、
これらは「育成上手」「育成下手」のイメージからくる差に他ならない。

佐藤世那を簡単に分析してみよう

最後に、佐藤世那がなぜ3年で戦力外になったのか、
というよりも、6位指名と
知名度に対して期待値がかなり低かったのはなぜだろうか。
散々指摘されているのはフォームの弱点だ。
実際のところアームでも長く活躍する鉄腕もいるにはいるが、
一般的にアームの投手がフォームを矯正せずに大成する確率は
非常に低いようだ。

スタッツはどうなっているだろう。

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何とも奇妙な選手である。
二軍ではこの3年間あまり成長したとは言えない内容になっている。
というか3年間ほとんど変わっていない。
そして高校時代。
準優勝したのでかなり高い評価をする人も少なくなかったが、
スタッツは何とも微妙な内容だった。
エースとして活躍したU-18は木製バットなのであまり参考にはできない。
こうしてみると佐藤世那という選手は、
どこかで突然化けないとかなり時間がかかる。
それでいてスタミナはある上に
そこそこ抑えてしまう能力はあるから、
大学や社会人だと便利すぎて育つ前に多投で潰れかねない。
なかなか難しい選手で、6位まで残ったのも仕方のないところだった。

まだまだかかるということは、
あと数年後に一皮むけることは充分ありうるわけでもある。
オリックスでは枠が足りなくなり戦力外となったが、
佐藤が社会人で、どのようにして相手を抑える術を身につけるか、
今後も注目したい。