スポーツのあなぐら

主に野球のデータ、ドラフトについて書いていくブログ。更新頻度は気まぐれ

横浜暗黒期前10年のドラフトを振り返る

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以前、2012年以前の中日ドラフトを扱ったが、
今回は横浜編。
2002年に最下位に沈むと、
そこから2015年までの間Aクラスは2005年だけ、
そのほとんどが最下位という長い暗黒期を経験した。
暗黒期に突入した原因を、
大御所のドラフト評論家ほど
暗黒期に入った後のドラフトのせいにして、
その前のドラフトの影響をなかったことにしたがるのは
近年の中日と共通している。
横浜の場合はちょうど2002年から親会社がマルハからTBSに変わったので、
叩くには色々と都合がいい面もあるようだ。

前5年で高校生が増えた上位指名

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  高投 高野 大投 大野 社投 社野
1992       1 1  
1993     1     1
1994   1     1  
1995     1   1  
1996     1   1  
1997 1 1        
1998   1 1      
1999   1 1      
2000   1 1      
2001 1     1    
  2 5 6 2 4 1

92~96年では、高校生は抽選で獲得した地元の紀田だけ。
それ以前も上位で高校生を指名することは少なく、
野手は91年に永池恭男(2位・萩原淳の外れ指名)を獲っているが、
高校生投手となると87年外れ1位の盛田幸妃*1までさかのぼる。
そんな横浜が高校生中心になったのは97年から。
2位では逆指名を行使することも多かったのだが、
1位は5年連続で高校生を指名。
そのうち3回は高校生の一番人気に特攻した。
抽選に当たったのは97年2位の新沼(3球団)のみ。

2002年以降はこうなっている。

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  高投 高野 大投 大野 社投 社野
2002     1 1    
2003     1   1  
2004     2      
2005 1       1  
2006 1       1  
2007 1       1  
2008       1 1  
2009   1     1  
2010     1   1  
2011 1 1        
2012     1 1    
2013         2  
2014     2      
2015     2      
2016     2      
2017     1     1
2018     1 1    

2002~04年は3年連続で自由枠2枠。
森なんかはマルハ時代から逆指名を確約していた節があるので、
これをTBSだけのせいにするのはどう見てもおかしいのだが。
その後のドラフトでは、
一番人気に向かってはくじを外す展開が目立つ。
2005年以降に3球団以上の競合で当たったのは柿田だけ。
1勝10敗で勝率.091だ。
当たらないボールを振って空振り三振しても、
そこからは何も生まれないのである。

暗黒前に続いた高校生重視

  高投 高野 大投 大野 社投 社野
1992 2 1   1 3   7
1993 1   2     3 6
1994 1 4     1   6
1995 1 2 1   1   5
1996 1 2 1   1   5
1997 2 2       1 5
1998   3 1 1   1 6
1999 3 2 1   1 1 8
2000 3 3 2   1   9
2001 3     1 1   5
  17 19 8 3 9 6 62

改めて考えると、
2001年以前の横浜ドラフトは、
2つではなく3つの時期に分かれる。
まず1992・93年が
上位・下位とも大学生・社会人中心の指名。
次に94~96年。
上位は紀田以外大学生と社会人だが、
3位以下は高校生偏重というか
10人全員が高校生という極端な指名になった。
そして97~2001年。
3位以下では少し大学・社会人の指名が増えたが、
代わりに上位指名でも高校生が激増。
全体の63.6%を高校生が占めた。
ちょうどこの時期にチームが5年連続Aクラスだったこともあって、
当時の評論家、ドラフトマニアから大絶賛された*2時期だ。

2002年以降はTBS時代まで見ておこう。

  高投 高野 大投 大野 社投 社野   高投 高野 大投 大野 社投 社野
2002 1 2 2 3 1 1 10              
2003     2 1 1   4              
2004 1 1 4 2   1 9              
2005 1 1   1 2   5              
2006 1 2   1 2 1 7              
2007 3 1 1   1   6   1   1     2
2008       3 2   5              
2009 2 1     2   5 2           2
2010     3   2 3 8       1     1
2011 4 4       1 9         1 1 2
  13 12 12 11 13 7 68              

こっちはこっちで、また妙な指名になっている。
3年連続最下位の2002~04年は大社偏重。
2006年は大社3巡の木村雄太が拒否したので、
2005、06年ともバランス型と言っていい数字に落ち着いた。
そして2007年からは、
高校生偏重と大社偏重を交互に続けるドラフト。
前にも書いたが、
迷走しているというよりは
「2年間のトータルでバランスよく指名する」のが狙いだろう。

大成功が出ても大失敗の高校生路線

まず92~96年の結果から。

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野手はまずまず。
大社、高校生とも長く活躍する当たり選手が出ている。
と言いたいところなのだが、
ベイスターズ時代に二遊間で活躍した選手がいない。
また波留と多村が同時に活躍できておらず
ほぼ同じポジションを世代交代しただけ。
言い換えれば他のポジションの世代交代に失敗したともとれる。
投手はこの後致命傷を負うポイントが既に見えてきている。
大家のMLBでの活躍は2000年ごろから。

そして、97~01年。

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最初は内野で育成された古木、金城、内川が外野かファーストになったため、
ファースト以外の内野が1人も育たない結果になった。
しかも内川は完全な本格化から実働4年でFA移籍してしまっている。
投手は壊滅的。
先発はその前の5年と合わせても、
長くイニングを稼いだのが川村と吉見だけ。
リリーフも木塚以外全員が短命で、
特にあれだけ指名した多数派の高卒投手が全くと言っていいほど使えなかった。
マルハ時代を振り返ると、
野手が93年まで、投手は96年までのドラフトが日本一に貢献したが、
その後のドラフトが暗黒期を作る原動力になってしまったと言える。
どちらも高校生中心になってからで、
しかも大当たり選手を輩出したのにこうなったのだ。

02~04年も見ておこう。

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サードは1年目セカンドに回った村田が戻って固定。
ここは良かったのだが、
藤田は成長に時間がかかり、
石川も攻守とも伸び悩んだ。
もったいないのが吉村で、
一般的に野手の全盛期は27、8歳ごろのはずなのに
吉村は22、24歳で全盛期を過ぎると20代後半はずっと低迷し続けた。
一方の投手は、マルハ時代の弱点が何一つ改善されていない。
暗黒期が長引くわけである。

前5年に似たようなドラフトをした横浜と中日

こうして見てみると、
マルハ横浜と中日のドラフトは似た点が多い。

  • 直前5年間の上位指名は高校生主体
  • 直前5年間に高校生投手の指名が激増
  • 暗黒期突入後に大社中心のドラフトで酷評
  • 暗黒期の原因が暗黒期後のドラフトのせいにされ、
    その前のドラフトが全く検証されない

野手の指名に関しては両者に共通する点があまりないが、
上位指名と全体の投手指名が妙に似ている。
そしてどういう理屈でこういう矛盾したことが言えるのかは知らないが、
「5年前、10年前のドラフトが大事」と盛んに主張する大御所ほど
暗黒期の原因はその前のドラフトに求めない。
という異常な事態になっている。

大社重視で暗黒を脱したDeNA

じゃあ、暗黒期突入後も高校生中心の指名をしていれば
うまくいったのだろうか。
当時の横浜を絶賛していた人は「そうに決まっている」と言うのだろう。
あるいは「高校生もバランスよく指名すれば良かったはずだ」と言うか。
まあどのみち彼らの場合「バランス型指名=高校生偏重」なのだが。
ただし過去には、暗黒期から「バランス型指名」に転じて
致命傷を負ったチーム
もある。
いずれそのチームについても触れるつもりだが、
最後にDeNAになってからの全体の指名を見ておこう。

  高投 高野 大投 大野 社投 社野   高投 高野 大投 大野 社投 社野
2012     1 1 2 2 6 1           1
2013   1 1 1 3   6 1       1   2
2014 1 1 2 1 1 1 7   1         1
2015 1 1 2 1 1 1 7   2 1       3
2016 1 2 3 2 1   9         1   1
2017 2   1 1 2 3 9 1           1
2018 1 1 1 1 1 1 6 1           1
  6 6 11 8 11 8 50 4 3 1 0 2 0 10

野手のほうは筒香、梶谷、桑原といった置き土産もあったが、
全体的に大社重視の指名を続けている。
上位指名では高校生は1人も獲得していない。
もっとも1位指名では高校生にも2度入札しているし、
即戦力しか獲っていないわけでもない。
こういう指名で、ベイスターズは暗黒期を脱したのである。
現在のチーム状況では
本指名の高校生:大学・社会人=1:2ぐらいが程良いバランスになっている。
ただ高校生偏重ではない指名が不満なのか、
昨年4位になったところでまた横浜のドラフトが叩かれるようになった。
しかし、忘れてはいけない。
ベイスターズは、
最近のドラフトを批判し、
高校生偏重指名をさせる大御所評論家が理想とする指名を続けた後に
長期にわたる暗黒期に突入したという事実を。

*1:入札は長嶋一茂

*2:リンクはその一例